チャプター 6

「了解」そう言って電話を切り、オフィスへ向かった。

すぐにまた着信が鳴った。ガブリエルだ。

「離婚届、もう署名したか?」玄関で靴箱の上に携帯を放り、かがんで靴を履きながら、私は気のない調子で出た。

「世間を騒がせてトレンド入りするほどの醜聞を起こして。満足か?」苛立ちでささくれた声が、通話の向こうでバリバリと響く。

「どうしたの、シンクレアさん。恥ずかしいの?」

「広報チームを手配している。騒ぎが収まるまで姿を見せるな」氷のように冷たい口調だった。

「ガブ、怒らないで。エンバーも、わざとじゃないと思うの。きっと……寂しかっただけよ」イザベルの吐き気がするような声が、受話器越しに漂ってきた。

その媚びる調子を聞いた瞬間、ささやかな感謝の欠片すら消し飛んだ。「シンクレアさん、ご親切に。どうやら昨夜はずっと、大事な可愛い妹の面倒を見ていたみたいね。ちなみに、うちの会社でもう広報チームは手配済み。だからお気遣いなく」

冷たい笑いとともに通話を切り、私は車でオフィスへ向かった。

会議室では、父がすでに広報チームを集め、緊急会議を開いていた。初動の危機管理プランも叩き台ができている。私を見るなり、父の目に責める色は一切なく、ただ心配だけがあった。手を取って言う。「大丈夫だ。何があっても、父さんがついている」

「ありがとう、パパ」目の奥がつんと熱くなった。

「あなた、どうして来たの? 今朝、家で休んでいなさいって言ったでしょう。必要なものは何でも持って行くから」母はオフィスにいる私を見て、顔色を曇らせた。

前の人生で、私がガブリエルとの結婚を押し通さなければ、両親の死を遠回しに招くこともなかった。ブレイク家の財産が、丸ごとガブリエルの手に落ちることも。

「ブレイク様、手掛かりが出ました」情報システム部長が呼んだ。投稿者の識別情報を突き止め、位置を特定のマンション群に絞り込んだという。やはり。黒幕はイザベルだ。

セリアが自ら乗り込んで問い詰めた。的確な脅しと餌を少し与えると、素人同然のパパラッチはあっさり全部吐いた。イザベルが彼を雇い、ガブリエルと一緒に写った写真を撮らせ、話題を作らせていたのだ。私は巻き添えにされたにすぎない。

私はすぐガブリエルに電話をかけた。「まだ大事な妹の看病ごっこ?」

「エンバー、今度は何だ。どれだけ皆が、お前の尻ぬぐいに必死で動いてると思ってる。これ以上こじらせたいのか?」ガブリエルは疲れ切った声だった。

「写真がどうやって出回って、拡散したのか知りたい?」私はパパラッチの録音した自白を送った。

向こうが沈黙する。やがて――「エンバー、ベルが好きになれないのは勝手だが、でたらめを言うな。彼女は昨夜ずっと広報チームと一緒に、お前の件で――」

「ガブ、エンバーを責めないで。今、どれだけつらいか……。私を責めて気が楽になるなら、私は気にしない」待ってましたとばかりにイザベルが割り込み、またしてもガブリエルの保護本能に火をつけた。

「エンバー、ベルはただの無垢な子だ。どうしてそんなことをする?」

はっ。目の前に動かぬ証拠があっても、ガブリエルの中でイザベルは永遠に無垢な“可愛い妹”で、私は永遠に理不尽で嫉妬深い嫌な女というわけだ。

「ガブリエル、証拠は送った。見ないふりをしたいなら、あなたの勝手。あと、うちの弁護士が近いうちにイザベルに書類を届ける。あなたのそばにいるなら伝えて。彼女は、自分が受けるべき報いを全部受けるって」

言い返される前に切った。

前の人生では、ガブリエルと私はやっと関係を修復し始めていた。彼の子を妊娠してさえいた。イザベルさえいなければ、あんな破滅的な代償を払わずに済んだのに。そして今もなお、彼は彼女のために言い訳をする。ガブリエルに対して私が握りしめていた、みじめな希望の最後の切れ端が、完全に崩れ落ちた。

その日の午後、広報チームは私名義で公式声明を出した。第一、ガブリエル・シンクレア氏との離婚手続きは進行中であり、不貞行為は存在しない。第二、バーでの写真は悪意ある角度で切り取られた捏造であり、証拠は収集済みで、イザベル・プライス氏に対して法的措置を開始した――。

声明は瞬く間に拡散した。イザベルが工作員を雇い、ゴシップ系アカウントに金を払って私を貶めていた証拠が次々と出回り、世論は一気に反転した。だがネット民は、写真に私と一緒に写っていた謎の男――ヴィクターの正体に執着し始めた。

また電話が鳴った。案の定、ガブリエルだ。さっきまでの怒号とは違い、声はずいぶん柔らかい。

「まだ私が彼女を中傷してると思う?」

長い沈黙の後、ガブリエルはしゃがれた声で言った。「エンバー……ベルは、自分が悪かったって分かってる。まだ若いんだ。どうか、告訴だけはやめてくれないか」

つまり、イザベルの仲裁役を買って出たわけだ。

「いいよ」私はためらいもなく応じた。

ガブリエルが明らかに安堵の息をつく。「エンバー、ベルが礼を――」

「その代わり、離婚届には今すぐ署名して。じゃなきゃ、気が変わるかも」返事を待たずに切った。

間髪入れずに知らない番号からかかってきた。眉をひそめつつ出る。「もしもし?」

「君の醜聞の相手だ」ヴィクターの声に間違いない。

私は顔をしかめた。「巻き込んでごめんなさい」狙いが私だったことは分かっている。ヴィクターは完全なとばっちりだ。

「謝るだけ?」

「それで、何が望みなの?」

「補償するべきじゃないか?」

「いくら?」疲れ切っていた。常識的な額なら、値切る気力もない。

「直接会って話そう。どれだけ誠意があるか見たい」ヴィクターは面白がっているような声だった。

「まだ騒ぎが完全に収まってない。人前で会うのは得策じゃない」

「君の家に行ってもいい」

私は眉間に皺を寄せた。相手の駆け引きに付き合う気にもなれず、そのまま電話を切った。昨日の取引履歴を探し、同じ口座へ二十万ドルを送金した。

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